「困るんだよなあ。30年前も皆必死に欠けた鏡なんて探してさ。今回もそうだ」


一転、眉間にしわを寄せた険しい表情で、フウッと溜め息を吐いた原田先生。


「な、何を言ってるんですか?原田先生……困るって」


言いようのない強い不安が私を襲う。


「困るんだよ……今になってあいつに出て来られちゃあ。まさか死ぬだけじゃなく、鏡の中の幽霊になってるなんて思わないじゃないか」


原田先生が言ってる事がわからない。


だけど、話の内容から、ある程度は推測出来る。


「まさか先生……人を殺したの?」


影宮さんが尋ねると、原田先生は睨み付けるような視線を向けた。


「俺は殺していない!あいつが勝手に転んで鏡に突っ込んだんだ!……次の日に見に来たら、死体も割れた鏡も消えてたよ。誰かがあいつがここに入るのを見たんだろうな。生徒が消える美術準備室なんて怪談になったのは」


あいつって……もしかして鏡の中のナニか?


原田先生の話が本当なら、ここで誰かが死んで、鏡の中の幽霊になった……。


そんな事が起こるなんて信じられないけど、実際に鏡の中のナニかは存在してあるわけで。


そして、そんな事を話すという事は……。