涙を拭って、真弥ちゃんの遺体の横を通り、階段を駆け下りる。


影宮さんが、悲しみに潰されて動けないと言うのなら、私だけでも鏡を探さないと。


「京介、もう来てるかな」


色んな感情が、ぐっちゃぐちゃにかき混ぜられているかのように、私の心の中で暴れている。


怒り、悲しみ、恐怖……どれが一番強いのかもわからないまま、私は走った。


階段を下り、廊下を走って生徒玄関に。


「ん?おう。迎えに来たのか?そこまで酷い怪我じゃねえから大丈夫なのによ」


京介が、丁度靴を履き替えようとしている所で、何も知らずに笑顔で私に手を挙げる。


「真弥ちゃんが……死んだよ」


口に出したくなかった言葉。


認めさえしなければ、死んでないとでも思ったのかな。


さっき押し出された涙が、今度はせきを切ったかのようにボロボロとあふれ出した。


「お、おい……菜月」


突然泣き出した私に驚いたのか、慌てて、足を引きずりながら近付いて来る。


「私、早く終わらせたい。もう失いたくないよ、誰も……」


そう言った私に、京介は手を伸ばして、私の頭を軽く撫でた。