「あ……」



小さくそう呟いた須藤君が、力なく崩れ落ちる。


だけど、見えないガラス片に磔にされているようで、宙に座っているような体勢で動きを止めた。


須藤君の抵抗を、私よりも小さな身体で制し続けた影宮さんの疲労は、目に見えてわかる。


自分がした事の重大さにようやく気付いたのか、鏡を構えたまま、ゆっくりと後退して腕を下げた。


それと同時に、須藤君の眉間から頭頂部にかけて傷口が広がって行く。


そして頭部が裂けて、糸の切れた操り人形のように、力なく床に倒れ込んだ。









「お、おい……もう二人も死んだのかよ……」


「は、早く鏡を探さなきゃまずいんじゃないの!?」







自習室から出て来た野次馬の生徒達が、真弥ちゃんと須藤君の遺体を見て騒ぎ始めた。


ここ最近で、随分人が死んだ。


だから、感覚が麻痺し始めているのだろう。


人が死ぬという事はどこか他人事で、でも自分が死ぬのは嫌だとはっきり言える。





「は、早く鏡を探せ!」


「鏡を見付けたらどうすれば良いの!?」




そんな思いがあふれだしたのか、生徒達が口々に叫んで廊下を走って行った。