それでも、視界の端に映る鏡。


見えないように背を向けるべきなんだろうけど、鏡が見えないのも怖いから。


だから、完全に見えないようにはせずに、ギリギリの所で微かに見えるようにしておきたい。


ショートヘアだから、髪を拭くのはそんなに時間が掛からない。


まだ、視界に映る鏡に変化はないように思える。


浴室の鏡から移動していないのだろうか。


今のうちにと、急いで身体の水分を拭き取り、下着を身に付ける。


「あー……しまった。着替えを忘れちゃったよ」


鏡の中のナニかを怖がるあまり、部屋着を持って来ずにお風呂に来てしまった。


かと言って、血が付いた制服を着るわけにもいかないし……。


まあ、誰に見られるわけでもないから、下着姿で部屋に戻っても良いんだけど。


フゥッと溜め息を吐き、バスタオルを洗濯カゴに入れた時……視界に映る鏡の中で、何かが動いた。











……私の背後にいる。


いや、はっきりと見えているわけじゃないから、本当にいるのかはわからないけど。









それを見る勇気がない。


私とドアの間に、黒い何かがいる。


そんな気がして……。