どうしよう、ここを通るくらいなら、部屋に戻って布団を被って震えていた方が良いかな。


夢だとわかっていても、最後に恐怖して殺されるなんて嫌だし。


と、少し悩んでいた時だった。












「桐山さん、大丈夫よ。そこにナニかはいないから、下りてきて」












一階の方から聞こえたその声に、私は悩んだ。


影宮さんは今日、ナニかを見ないように行動したかもしれないけど、私はもう目を合わせてしまったんだよ?


それなのに、ここを通る勇気なんてない……けど。


頭ではそう考えているものの、影宮さんの言葉がなぜか心地良くて……身体は意思に反して前に進んだ。


最初の鏡……「10」と書かれた鏡面。


それに自分の姿を映した時、そこに映ったのは、私ではないという事にすぐに気付いた。


「ひっ!」


暗いけど、なぜか分かる鏡の中の人物……。













それは下顎から上がない、片桐さんの姿だった。














そうとわかったのは、切り裂かれた頭部を、大事そうに脇に抱えていたから。


私が驚いて、壁に当たると、鏡の中の片桐さんも壁に当たる。


これは……鏡が、私の姿を片桐さんに見せているのだと、そこで気付いた。