ペタペタと、廊下を歩いて行く音も聞こえて、トイレに行ったのだろうと思ったけど、なぜか少し気になる。


そっと身体の向きを変えて仰向けになり、ゆっくりと目を開けてみると……。


















赤い目をした真っ白な顔が、醜悪な笑みを浮かべて私の顔を覗き込んでいたのだ。

















「ひゃあああああああああああっ!」


この状況、逃げる事が出来ない!


私に出来る唯一の事、布団を頭から被って震える。


だけど、布団なんかじゃガラス片で簡単に引き裂かれてしまう!


怖いけど……こうなったら逃げて、一階にいるはずの影宮さんに助けを求めるしかない!


「こ、来ないで!!」


意を決して、被っていた布団をナニかに被せるように、私は手足で布団を放り投げた。


ほんのわずかな時間でも、足止めできれば良いという思いで。










だけど、ナニかがいる場所に放り投げた布団は、何にも引っかかる様子はなく床に落ちたのだ。


「え!?何がどうなって……」


少し考えたけれど、理由なんてわからない。


ただ一つ、推測出来る事は……これはもう、夢の中なんじゃないかという事だった。