あれ……なんだろう、あの痕。


手首のしわかと思ってたけど、何本もある……。


「影宮さん、その手首どうしたの?」


何気なく尋ねたその言葉で、慌ててジャージの袖を隠した。


「……見たわね?気付かなければ良かったのに」


バスタオルを頭に乗せたまま布団の上に腰を下ろして、私の目を見詰める。


鏡は……大丈夫、影宮さんが来てから動きを止めたから、とりあえずは安心だ。


「……これは、私が中学生の頃、何度も死のうとした痕よ。当時の私は友達がいなくて……毎日いじめに遭ってて、生きるのが辛かったの。だから、こうなったのよ」


そう言い、そっと袖を捲って手首を見せてくれた影宮さん。


……最初は慌てて隠したのに、どうして見せてくれたんだろう。


本当なら知られたくないと、隠し通そうとしてもおかしくないのに。


「そ、そうだったんだ……なんて言ってわからないけど……」


いじめられてて、死のうとしていたなんて。


私は一度もそんな経験がないから、影宮さんにどう言葉をかけて良いかがわからなかった。


「別に良いわ。今はいじめられてるわけじゃないし。それに……桐山さんや真弥ちゃんとも仲良くなれたから、生きてて良かったと思えるの」