ゾワゾワと、頬を指先で撫でられるかのような不気味な感覚。


これは……夢!?


いや、眠った覚えはない。


横にもなってないし、夢を見ているような不思議な感覚はないのに。





カタカタカタッ。




まるでナニかが、伏せられた鏡から出ようと暴れているかのようだ。


「な、なんでこんな……ダ、ダメッ!」


慌てて鏡に飛びついて、上から押さえ付けた。


だけど、それでも私の手を振り払わんばかりの力で、カタカタという動きは止まらない。


ど、どうしてこんな事になってるの!?


押さえ付けられない程じゃないけど、このままずっとこうしていなければならなかったらどうしよう!












「……こっちにおいで」












カタカタと鳴る鏡から聞こえた声。


私を見て……じゃない。


こっちって、あの世の事!?


冗談じゃないよ!


「ちょっと!マジでやめてよ!私はまだ死にたくない!」


そう叫んだ時だった。










バンッ!









と、今度はテーブルを叩くような音に変わり……。


テーブルと鏡の僅かな隙間から、白い手が出たのだ。