伊達君の隣に立って、自分は決して鏡に映らないように。


勝ち誇ったような笑みを私達に向けたまま、伊達君は動かない。


影宮さんが、そんな伊達君の前から鏡を取り払った時……その笑顔に幕が下りるように、赤い液体が流れ落ちた。


勝利を確信した伊達君の笑みが、私が見た最後の表情で。


もしかすると、何が起こったのかさえわからないまま死んだのかもしれない。


それほどまでに、前のめりに倒れる伊達君の表情は満足気だった。







グチャッと、顔面から崩れ落ちた伊達君の後頭部。


そこを見て、私は何が起こったかを想像する事が出来た。


頭頂部から、斜めに切り取られた頭部。


床に打ち付けられた衝撃で、脳がプルンと揺れる。


恐怖の対象であるナニかに助けられた。


私達の、どちらを味方しているというわけではなく、ナニかからしてみたら、私達は等しく獲物なわけで、影宮さんが来てくれなければ、殺されていたのは間違いなく私だ。


「影宮さん、助かったよ。ありがとう」


唸る京介を抱き締めながら、私は顔を上げて呟いた。


「良いのよ。でも、また数字が減ってしまったわね……」