「僕に反論しやがって……紫藤!お前も殺してやる!」


やけになった伊達君が、ポケットから鏡を取り出して素早く京介に向けた。


でも、その動きを制するように、京介が伊達君の腕を掴んで殴り付ける。


ゴンッという鈍い音が聞こえ、伊達君が派手に床に倒れ込んだ。


だけど……。











「ぐっ!?」










伊達君を殴り倒したはずの京介が、足を押さえて膝から崩れ落ちたのだ。


な、何?


何もされたように見えなかったのに……京介の足からは血が流れ、明らかにダメージを受けているように見える。


一体どうして……と、思ったけど、その答えは明白だった。


「か、鏡……」


慌てて振り返って、踊り場の鏡を確認すると、さっきまで鏡の中にいたナニかがいない。


きっと、伊達君が向けた鏡の中に移動して、映り込んだ京介の足にガラス片を突き立てたに違いない。


このままでは京介が殺される……。


そう感じた私は、急いでポケットから鏡を取り出したけど、それよりも早く伊達君が上体を起こして、鏡を京介に向ける。


「ふ、ふざけんな!」


怪我した足を引きずって、なんとか鏡に映らないように逃げようとするけど、鏡を京介に向けるだけでいい伊達君の方が圧倒的に有利だった。