ナニかは「私を見て」と、何度も言っていた。


でも、私を含めて多くの人は、その不気味な顔と、いない人がそこに映るという恐怖から、慌てて目をそらす。


そんな中で、京介はじっとナニかを見続けて……殺されるどころか、ナニかと対話をした。


要求を拒否した人は殺されて、京介のように受け入れた人は助かるとしたら……とんでもない話だ。


あんな顔が鏡の中だけに現れたら、怖くないはずがないのに。


それを……京介はやったんだよね。


「うん?待てよ?なあ、原田先生のクラスメイトが、欠けた鏡を探してたんだよな?」


「え?あ、うん。そうだね」


何かを考えている京介の横顔を見ていたから、急にこっちを向いて驚いた。


「怪談にも欠けた鏡の話なんてねえし……もしかしたら、そのクラスメイトも幽霊と話をしたんじゃねえのか?そうじゃないとしても、他に話をしたやつがいたはずだろ?」


……そう言われてみればそうだな。


原田先生から欠けた鏡の話を聞いて、私達は新しい情報に飛び付いたけど、その話の出どころを考えると、鏡の中のナニかしかいない。


つまり、30年前も、誰かが京介と同じ事をしたという事になる。