き、来た!


今まで姿を見せなかったナニかが、よりによってこんな時に来てしまった!


「鏡から離れて!!」


慌てて京介に駆け寄り、腕を引っ張ろうとした瞬間。












バンッ!!












と、鏡面を叩く音と共に、鏡の中から白い顔が、私を睨み付けるように見たのだ。


「ひっ!!」


見てはいけないとわかっているのに、不意打ちで現れた、そのおぞましい赤い目を見てしまった私は、驚いてトイレの入り口まで後退してしまった。


たけど……京介は動かない。


小さく「うわっ」と声を上げたものの……まるでナニかとにらめっこをするかのように、鏡から視線をそらさなかったのだ。


「京介……早く逃げて!」


このままではナニかに殺されてしまう!


何人も殺された所を見ているのに、どうして逃げようとしないの!?


鏡の中に映るナニかを見るだけで、私は怖くて身体が動かない。


まさか京介も……。










「あ、ああ……わかった。でもよ、見付からねえんだよ」












何かわけのわからない事をブツブツと呟き始めた。


このままじゃ、本当に殺されちゃうよ!