「なんだよこれ……見ろよ、枠だけだぜ?」


布を捲り、ハハッと笑って私達にそれを見せる。


「まあ、取り外す際に割れたのかしらね?1枚や2枚、そんな物があってもおかしくはないわ」


その枠は移動させなくても問題ないと判断して、棚に立て掛けて片付けは出来た。


後は、この準備室の中を調べるだけなんだけど……。






「でもよ、何を調べれば良いんだよ……これ」








鏡を移動させた京介が、室内を見回して呟いた。


鏡で隠されていた棚。


使われなくなった画材や、石膏像は置かれているものの……ほとんど何も置かれていないという状態。


それでも調べる事10分。


何か手掛かりをと思って調べた美術準備室は……怪談に繋がるものが、何もないという結果に終わってしまったのだ。


「……何もなかったね」


「そうね。三つの怪談には何か意味があると思ったんだけど……消えた生徒と言うのも、家出でもしただけかもしれないわね。生徒立ち入り禁止の貼り紙が、変な噂になっただけかもしれないわ」


少し残念そうだけど、何もないなら早くここから出たい。


依然変わらず、冷気はこの室内のどこかから漂っているのだから。