「こ、これ……何でこんな所にこんなに鏡が!?」


意味がわからない……どうして美術準備室に鏡が集められているのか。


「この大きさは……踊り場の鏡?取り外された鏡が、ここに集められたのかしら」


布の表面を撫で、警戒するように部屋の中を見渡した。


それと同時に、足元に漂い始める冷気。


廊下の方から……部屋の入り口から流れ込んで来ている。


足首を掴むような、纏わり付くような冷たさが、足を上がって来るよう。


「来てる……間違いなくナニかがここにいる!」


鏡を見なくてもわかる。


昨日の夢の中で感じたあの冷気が、現実の物となって私達に襲い掛かって来ているのだから。


「桐山さん!?どうしてそんな事がわかるの!?私にはわからないけど」


「わかるとかわからないとか、そんなのどうでも良いだろ!どうする!逃げるか、調べるのか!?」


私は……逃げたい。


だけど、影宮さんは入り口に背中を向けて、逃げようとしなかった。


「……調べるわ。ナニかがいなくなるのを待っている余裕なんてないわよ!」


ここにある鏡を避けて、美術準備室で人が消える謎を調べなければならないのか。