喉が渇いたのかなと、取り出した水筒を見ていたら……それが大きく振り上げられて、勢い良くドアノブに打ち付けられた。


ガンガンと、金属がぶつかる音が辺りに響き渡り、その度にドアが小刻みに揺れる。


「くそっ!くそっ!ぶっ壊れろよコラ!!」


京介の顔は、今までに見た事のないような険しい表情で、怒りをドアノブにぶつけているよう。


だけど、ドアノブは思ったよりも頑強で、いくら殴りつけてもビクともしない。


「……紫藤君、頑張っているところ悪いけど、ちょっと良いかしら?」


「ああ!?何だよ!もう少しで何とかなりそうなんだよ!!」



そんな京介に、影宮さんが声を掛けるけど、それでもドアノブに水筒を打ち付ける。


「……ドアノブじゃなくて、そこのガラスを割った方が早いんじゃないかしら?」


そう言って影宮さんが指差したのは……ドアのガラス。


細長く上に伸びたそれは、割れば内側のドアノブに手が届く。


そう、ドアノブを壊すよりもずっと簡単に、ロックを解除する事が出来るのだ。


「……早く言えよ!」


「だって、ガラスを割ると思ったもの。なかなか滑稽だったわ」


クスクスと笑う影宮さんに怒った京介は、言われた通りに水筒をガラスに打ち付けた。