大して仲が良いわけでもなかった樹森君。


だけど、昨日は少しの時間とはいえ一緒に行動していたから、そんな彼が死んだショックは大きい。


美術準備室の前、階段からそこまでの短い距離を、誰も何も言葉を発そうとはせず、影宮さんがドアを開けようとしてやっと声が出たという感じだ。


「……当然だけど、開かないわね。ここの鍵は生徒には貸してくれないし、どうしたものかしら?」


生徒立ち入り禁止と書かれた貼り紙があるドアにそっと手を当てて、首を傾げてみせる影宮さん。


「どうしたものかしらねって……何も考えずにここに来たの!?」


「あら、何も考えてないなんて失礼ね。このドアを開けた後の事は一応考えてるわよ?問題は、このドアなんだけど」


そんなの、ドアが開かなかったら意味ないじゃない。


もしもこのドアの向こうに、ナニかに繋がる何かがあるとしても。


「ごちゃごちゃ言ってても仕方ねえだろ。どけよ」


ドアの前で考え込む影宮さんを押して、京介がドアの前に立った。


木製の片開きのドア。


ドアノブを回そうとするけど、ロックされていて回らない。


普通にやっていても開かないと判断したのか、京介はカバンの中からステンレス製の水筒を取り出した。