そんな事を考えていても仕方がない。


ナニかを見なければ、それで済むんだから。


階段を上り切って、廊下の奥を見る。


怪談話の舞台になっている美術準備室……。


それがあると思うと、黒く禍々しい気配が漏れ出ているかのよう。


「薄暗いわね……一番奥の蛍光灯が切れてるなんて、出来過ぎてるわ」


何かありそうな雰囲気は満点。


これなら、用事のない生徒は近付こうとも思わないよね。


でも、私達はその美術準備室に用事がある。


「よし……行くぞ」


と、京介が私の背中をポンッと叩いた時だった。

















「な、何なんだよテメェは!!追い掛けて来んなコラ!!」












背後から……棟の反対側の廊下から、怒鳴るような声が聞こえた。


階段を上がり、こっちに近付いてくる足音。


「待て……待て!木崎!お前が僕にした事を償わせてやる!」


この声は……樹森君?


「あいつ……まさか木崎を殺そうとしてるんじゃねえだろうな!?」


京介の声と共に、木崎君と樹森君が廊下に飛び出して来た。


必死に逃げる木崎君を追い掛ける、鏡を持った樹森君。


いつもとは違う鬼気迫る表情が、恐ろしかった。