私達の教室がある棟の階段にも、同じような跡がある。


壁に埋め込まれていた鏡を外して、その跡を埋めたのだろう。


「鏡がない階段があるだけでも助かるよね。一度目を合わせたら、鏡に映るだけで危険だからさ」


もちろん、その鏡にナニかがいたら……の話だけど。


昨日、伊達君が私達に鏡を向けた時に、そこにナニかがいなかったから助かったけど、いつ、どこに現れるかわからないナニかは恐怖の対象でしかない。


「……桐山さん、目を合わせたらってどういう事?気付いたのに気付かれたら殺されるんでしょ?そう言えば、桐山さんの昨日の話をまだ聞いてないけど。何かあったのかしら?」


「あ、えーっと……あれは夢だったかもしれないから、本当かどうかはわからないけど……」


真弥ちゃんの家で、晩御飯を食べてすぐ寝たのなら、その後に起こった事は全て夢だという事になる。


「夢かよ。夢の話なら、しても仕方がねえな。さっさと行こうぜ」


階段を上りながら、ナニかを見た事がない京介があっさりと切り捨てる。


あれは本当に夢で片付けられる事なのかな?


それに、目を逸らしたら襲い掛かって来るというのも夢だったのか……。