美術準備室に向かう。


図書室から出た私達は、まだそれほど大きな騒動が起きていない事を確認して、美術準備室がある棟へと向かった。


「ところで、準備室で人がいなくなったなんていつの話だよ。そんな話、一度も聞いた事がねえぞ」


廊下を歩いて、隣接する棟に入った。


自習室を出た生徒達が、校内で動き回っているのか、人の動きと言うか……何か不穏な気配を感じる。


「聞いた事がなくて当たり前よ。だって30年も前の話ですもの。紫藤君の両親がこの学校出身なら、準備室の話を知っているかもしれないわね」


30年も前……それは聞いた事がなくて当たり前だよ。


だけど、怪談として、忘れられる事なく今までずっと語られて来たんだ。


それが逆に、この話の信憑性を裏付けているようで、怖さを感じる。