「ま、真弥ちゃん!ちょっと!」


私がそう言った時にはもう姿はなく、呼び掛けに答えて戻って来るはずもなかった。


「桐山さん、真弥ちゃんはどうしたのかしら?何だか思い詰めたような顔だったけど」


「さ、さあ……だけど、何だか嫌な予感はするかな」


詳しく話を聞いていたわけじゃないから、真弥ちゃんが何を考えているかはわからない。


可能性として、須藤君に振られて、その原因を作った皆川さんを憎んでいる。


そうじゃない、皆川さんの作り話だと言いに言ったのかもしれない。


私なら、好きな人に邪魔だなんて言われて突き飛ばされたら、落ち込んで諦めちゃうけどな。


「無茶しなきゃ良いけど……ところで、昨日怪談話を追っていたら面白い話を先生に聞けたわ」


真弥ちゃんは気になるけど、影宮さんが聞けたという面白い話も気になる。


それが鏡の中のナニかに繋がるというなら尚更だ。


「鏡の中に幽霊が映るというのと、呪いの声が聞こえるっていう話はもうわかるわよね?」


呪いの声……影宮さんに言われて、改めてあの声がそれだったんだと気付いた。


「つまり……怪談話は三つあるわけじゃなくて、二つだったって事?鏡の中のナニかが声を出してるんだから……」