ぶっ飛ばす……なんて言ってるけど、京介がそんな事を出来ないのを私は知ってる。


ちょっと不良っぽく見せる為に、口が悪い風だったり、態度を悪く見せてるけど、中学生になってから今まで、一度も喧嘩をしていないという事も。


そんな京介に引き起こされて、真弥ちゃんに手を差し出す。


「うん……ありがと」


いつも明るい真弥ちゃんの、声のトーンが低い。


「さあ、早く行きましょ。こうしている間にも、何人がうっかり鏡を見るかわからないわ」


そして、影宮さんの後に付いて下りた階段。


校舎の別棟に移る為の渡り廊下。


その途中にある図書室に私達は駆け込んだ。


「ここはまだ安全なようね。人は思ったより少ないけど」


自習室の異常な光景を見てしまったからか、静かに勉強をしている生徒がいる景色が平和に見える。


「とりあえず座りましょうか。話すのはそれからよ」


昨日、影宮さんは何をどこまで調べる事が出来たのか。


大きな机に荷物を置き、椅子に座ったのを見て、私と京介も椅子に座った。


だけど……真弥ちゃんは図書室の中に入ってなくて、廊下の先をジッと見て立ち尽くしていた。


「?真弥ちゃんはどうしたのかしら?」



「……皆ごめん。私、ちょっと行ってくる」


影宮さんが首を傾げると同時に、真弥ちゃんはそう呟いて走って行ってしまったのだ。