「何笑ってんだコラァ!ぶっ殺すぞ!」


クラスメイトの一人、成瀬君が声を上げ、拳を振り上げて伊達君に迫る。


しかし、伊達君は全く焦りもせずに、カバンの中から鏡を取り出して成瀬君に向けたのだ。


「!?」


昨日、一日掛けて刷り込まれたナニかの恐怖を感じたのか、鏡から目をそらす。


そして、その隙を伊達君は見逃さなかった。


顔を背けている成瀬君のお腹に、容赦ない前蹴りが飛ぶ。


「ぐっ!テ、テメェ!!」


「ムカつくか?だったらかかって来なよ。鏡を見る事が出来るならな」


わかりやすい伊達君の挑発に、成瀬君が目を閉じて拳を振り回し始めた。


「クソッ!ふざけんじゃねえぞコラァッ!堂々と戦え!」


「ごめんだね。どうして僕がお前みたいなバカと殴り合わなきゃならないんだ」


成瀬君から逃げるように後退して、さらにカバンの中から何かを取り出す伊達君。


それは……ボールペン?


「バカはテメェだ!声でどこにいるかわかるぜ!!」


そう言い、グッと拳を握り締めた成瀬君が、伊達君に向かって拳を振り抜く。


だけど……。












「ぎゃあああああああっ!!」


悲鳴を上げたのは、成瀬君の方だった。


振り抜いた拳に合わせるように、伊達君がボールペンを突き付けて。


成瀬君の右手に、ボールペンが突き刺さっていたのだ。