鏡の中のナニかに気付いてはならない。


ナニかに気付いた事を気付かれてはならない……。


あの時、鏡の中の顔は、咲良を見ていたはず。


私達はあれに気付いてしまったけど、あれは私達を見ていなかった……と思う。


「そう言えば、咲良は鏡越しに私達以外に誰かいるって言ってたよね……もしかして、ナニかに気付いたから」


「うん……きっと気付かれてしまったから……」


だから、片桐さんもブツブツ呟いていたんだ。


そしてきっと……自宅で鏡を見てナニかに殺された?


だけど、この学校の怪談なのに家で殺されるの?


いや、それよりも……怪談話が現実のものになるだなんて。


何年前かに起こった事件も、今回と同様の事が起こったのだろうか。


てっきり、先輩達が作った、怖がらせるだけの物かと思ってたのに。


「桐山さん、私達も気を付けないとね」


ボソッと呟いた影宮さんの言葉に、私は首を傾げた。


「私達は多分気付かれてないよね?」


だったら、大丈夫なんじゃないの?


そう思っていたけど……。


「本当にそう言える?ナニかがいる事を知ってしまったのよ?次にナニかが現れて……気付かないフリが出来る?」


咲良が死んでショックを受けているのに、影宮さんの言葉は、追い打ちのように私に襲い掛かった。


鏡の中のナニか……。


この後、本当の恐怖が襲って来る事を知らずに、私達はただ不安になっているだけだった。