「西久保君、怪我は?それと松本さんは?」
須田海斗は俺を見て声を上げるけど、七瀬が会話に入り込む。
「須田君。これ、妹さんの?」
カッターナイフを須田海斗に渡した。
よかった
凪子の味方がやってきた。
シスコンの須田海斗
早く凪子の無罪を証明してくれ。
ホッとするけど
須田海斗の答はこうだった。
「そうだね。凪子のだ」
驚きで言葉も出ない。
「凪子のだ。僕のは家にある」
「そうでしょう。だってこのカッターナイフ。うちの町では売ってないもん。誰ももってない」
七瀬も言い
後ろで森ちゃんが「結衣の夢を返してよ!どうして顔に傷付けたのよ!」って大きく叫び、他の女子に押さえられていた。
「凪子は今日の夕方。ひとりでどこかに出て行って、ついさっき戻って来た」
須田海斗の言葉をみんなは真剣に聞く。
「これは凪子のだけど、凪子がやったって証拠にはならない」
須田海斗がそう言うと
大きな波のようなブーイングが起きた。
「ウサギ殺しは凪子かもしれない」
須田海斗はよく通る声でそう言った。
「でもそれ以上の事はわからない」
悲しげな切ない声を出す。
「明日、教室で話し合おう。僕も家に戻って凪子から話を聞く。みんな疲れてるから、西久保君だってもう倒れそうだよ」
洗脳
須田海斗を言葉に表すのなら
その二文字に限る。
そして
それは誰も気付いていない。