「颯大!」
フェンスの外から車のライトを浴び、智和おじさんがすぐやってきた。
「智和おじさん」
その姿を見ると
恥ずかしいけど安心して泣きそうになる。
「よし。よくやった」
イケメン医師は俺に声をかけ
静かに結衣の脈を取り瞳孔を見る。
「傷は深い?」
「骨が見えた」
思い出すとまた胃液が逆流しそうだ。
俺の言葉におじさんは唇を噛んでうなずく。
「シャツはこの子が元気になったら買ってもらえ」
おじさんはそう言って少し笑ってくれたから、俺の心も安定する。
来てくれてよかった。
遠くから救急車の音が聞こえ、智和おじさんは救急車を誘導しようと立ち上がる。
もう少しだから
頑張れ松本。
「颯大!」
後ろの声に振り返ると
七瀬と森ちゃんと
あと数人のクラス仲間が立っている。
「結衣」
悲鳴のような声を上げ
80キロ近い森ちゃんがこっちに来て松本の顔を見てまた叫ぶ。
ヤバいパニックになる。
「先に救急車が先だ」
大きく俺は怒鳴り
誰も近よらさずに救急車と智和おじさんを優先させ、松本を救急車に乗るのを見送る。
大騒ぎに町の人達は沢山学校の近くに集まり
松本のお母さんは狂ったように松本の名前を呼び
七瀬たち女子はただ泣いていた。
「お前も頑張ったな」
智和おじさんは自分の半袖パーカーを裸の俺の肩にかけ、一緒に救急車に乗ろうとする
「結衣の様子を教えて下さい」
森ちゃんと七瀬がおじさんに叫ぶと、おじさんは「颯大にLINEする」って顔も見ないで返事をし、そのまま救急車は行ってしまった。