大きな小屋だった。

ウサギ6匹にはもったいないくらいの大きさで

そう
人が入っていても不思議じゃない大きさ。

大きな犬かと思った。
寝る場所が無くて
ここに入り込んだのかと思ったけど
犬が勝手にフックを開けて入るわけがない。

それはゆっくりと起き上がろうとするけれど、人間がまっすぐ立つには足りない。

俺は逃げる事も叫ぶ事もできなくて
ただ
その動きを見ている。

黒い塊がワラの山を乗り越えて檻の扉に向かう

そして俺は見た

月明かりに照らされた
松本の姿を。

「そうた……たすけて」

苦しそうな細い声を出し
松本は俺に訴える。

意識はある。

俺はウサギ小屋のフックを開き、グッタリした松本の身体を引っ張りウサギ小屋から脱出させた。

どうしてこんな場所に……。

松本は自分の顔を両手で押さえ
苦しそうにうなっていた。

ワラの付いた制服を払い、俺は松本を横抱きにして応援を呼ぼうとしていたら

ぬるりとしたものが
俺の身体にまとう。

自分のTシャツがまだらになっている。
赤黒いシミが沢山ついていて

それは顔を覆う松本の手にも身体にもベッタリ付いていた。

「顔が……熱い」

松本はそう言ってから俺に会って安心したように、力を抜き気を失う。

ダラリと下がった彼女の手は血まみれで

彼女の綺麗な顔の左頬には

目じりから唇の端まで

一直線の深い傷跡が付いていて

肉が開き
脂肪が割れ

白い骨まで見えていた。