「私の事……『可愛い』って言ってくれた」

顔を真っ赤にして松本は言う。

それって
俺らも昔から
ガンガン言ってるんですけど……。

初めて言われたって顔してるし。

「部活とか入りたいけど、妹さんが心配でひとりにできないんだって」

「身体弱そうだからね」

一昨日ここで話した時は
元気いっぱいで
爽やかないい笑顔を見せてくれたけど。

「これも内緒の話だけど」

でた
内緒話アゲイン。

「妹の方の須田さん」

「うん」

「精神を病んでるって」

「ええっ?」

大きな声を上げて松本に嫌な顔をされた。

「はっきりは言ってなかったけど」

「驚かせるなよ」

あービックリした。

「須田君がいないと何もできなくて、ひとりにできない……って言ってたよ」

「それはないわー。だって……俺は」

「何?」

一昨日
こんな感じで話をして
楽しく笑って過ごしてた

って、なぜか言葉に出て来ない。

「自転車2人乗りしてたんでしょ」

「……うん」

「須田君。颯大を心配してたよ」

「え?」

「昨日LINEが須田君から来て『西久保君が凪子に関わって、嫌な思いをしなきゃいい』って書いてた」

「あいつLINEやってるの?」

「当たり前でしょ」

当然って顔をされた。

いや
一昨日の俺もそう思ってたけど

「アイツの携帯ガラケー?」

「やめてー。須田君のは最新のiPhoneだし」

大げさに笑う松本の隣で
俺はLINEもやらず
古いガラケーを手にする凪子を思い出す。

双子なのに
どうしてこう差がついてる?