「ごめん。僕が全部答えるから。すぐ戻る」
今度は必死で頭を下げ
須田海斗は凪子の肩を抱き
引っ張るように輪から脱出しようとしていた。
俺はホッとした顔をし
ふと横を向くと
七瀬と目が合った。
『どうしてそんな顔してんのよ
凪子が逃げてよかったって思ってるんでしょう』七瀬の目が物語る。
俺は目をそらし
苦い顔をして
このまま静かに幕が閉じる様子を見ようと思っていたら
七瀬が一歩前に出て
須田兄妹の進路を邪魔をして
凪子が七瀬とぶつかる。
衝撃をうけた七瀬と凪子。
七瀬は自らぶつかって行ったから、そんな衝撃はなかったけど、凪子は須田海斗の腕から離れ机にぶつかりながら倒れて
そこの床で
カラン……と、何かが落ちた音がした。
見ると
凪子のスカートのポケットから
カッターナイフが滑り落ち
俺達は言葉もなくそれを見つめ
須田海斗は急いでそれを拾い、自分のポケットに入れ
何もなかったように
凪子を起こして
足早に教室を逃げるように出て行ってしまった。