朝からうだるような暑さだった。

「エアコン切ってんの?マジ?」

3つ下の妹がテーブルに座って声を上げた。

「窓は開いてますー」
対面キッチンで母親が大きく答ると
「信じらんない」
頬をプッと膨らませ
妹は目を細めて父親を見る。

父親は知らん顔でパンをかじりながらテレビを観る。

朝から女同士の争いに巻き込まれちゃたまんない。
そんな気持ちだろう。

男同士
それはよくわかる。
父親と一瞬目を合わせ、互いに小さくうなずいてパンを牛乳で飲み込んだ。

「あー早く学校行って涼しくなろうー」

これは俺に向けての嫌味。

この町の学校
エアコンが無い
おんぼろ学校は高校だけ。

地震対策で
よくわかんないけど基準に引っ掛かり
昨年
保育所から中学校まで
近代的で立派な校舎に生まれ変わっていた。

「高校は来年あたりかな」
町の役場勤務の父親が言う。

来年からって
完成は再来年だろう
ギリ1年しか過ごせないじゃん。

「今年は暑いなぁ」
ボソリと祖父がつぶやいた。


母親方の祖父と
役場に勤める父親
パート勤めの母親
中学1年の妹
高校1年の俺

平凡な5人家族。