「お兄ちゃん」

さっきとは真逆の強張った顔。
そのまま息を止めて倒れても不思議じゃないかも。

「だめだよ……」
抑えながら
震えながら
細く叫ぶような声を喉から漏らす。

そして
俺の手を握ったまま
彼女は射抜くような強い視線で俺を見上げ

「転校なんてしたくなかった」

彼女は告白する。

「でも……この町ならいいかと思った」

細い肩が揺れている。

「ドロン山があったから転校してきた」

「え?」

「ドロン山に行きたいの。消えてしまいたい……こんな私なんて消えた方がいい。永遠に……」

両手で顔を覆い泣き出す彼女を、ただオロオロと、どうしていいのかわからなくて、その細い肩を抱きしめたいけど手が動かなくて……彼女と同じくらい苦しくなる俺だった。