地雷を踏まないように
俺は楽しい話題を探すだけ探す

音楽の話
本の話
学校の話

「ウサギなんていたっけ?」

「知らなかった?」

「えっ?どこにいるの?」

「テニスコートの裏側にへこんだ敷地があるんだ。そこにいる」

「ペットショップでしか見た事ないもの」

「マジで?エサのやりすぎで太ったのが6匹いる」

「触りたい」

顔をほころばせ凪子が言う。
動物が好きなんだ。

「そのうち、普通に歩いてたらキツネも鹿も会えるから」

「本当?」

学校とは別人の柔らかな明るい表情。

その声
その仕草ひとつひとつに心が動かされ
自転車に乗ってる時
背中越しに感じた彼女の胸のふくらみを思い出し、心拍数が上がる。

自分の気持ちを抑えて
落ち着かせようとしていると

凪子が小さな声を出し
顔色を変えた。

どうしたのかと彼女の目線を追うと

公園から道路を挟んだ歩道に

彼女の双子の兄の須田海斗と、同じクラスの松本結衣が歩いていた。

ツーショットのふたり。

松本はかなり嬉しそう。
赤いチェックのふんわりしたワンピースを着て、はにかみながら須田海斗の隣を歩き、幸せそうな顔で並ぶ。

松本結衣はうちのクラスでも可愛いと評判で、これはショックを受ける男子も多いだろう。

「声をかけようか?」
手を上げて須田海斗を呼び止めようとすると、凪子は痛いくらいの強さで俺の手を握り、子供用の滑り台の方へと引っ張り俺達は須田海斗から隠れる形となる。