「都会ってどんな感じ?」
深みにハマりそうな暗い話を追いだす為
俺は明るく凪子に聞く。
「都会?」
微かに笑い
彼女は聞き直す。
「ライブとか行くの?ローソンの向かい側にローソンがあるってマジ?」
チャラけて聞くと凪子は笑う。
長い足をピンと伸ばし
ブランコを少し揺らし
小首を傾け
サラサラした黒い髪を夕陽に輝かせながら
凪子は俺の隣で笑う。
柔らかく
ちょっと照れた表情を見せて
彼女は笑う。
「……から来たんだよね」
須田海斗の自己紹介を思い出し
彼女の引っ越し前の場所を言うと、目線を外して地面を見つめる。
「うん」
「セレブが多いイメージあるけど、そうなの?」
「大きなお屋敷は沢山あるよ」
「須田家もセレブ?」
「世間一般ではセレブ」
「スゲー」
「でも最低な家」
気のせいか
凪子の表情が学校と同じになってきた。
「そーいえばさ、そこら辺で変死体が発見されたよね」
始業式の朝
テレビで観た事件を急に思い出す。
確か同じ地区だったはず
「頸動脈を切られた変死体って言ってたな。うちの妹なんてさ『吸血鬼っているのかなぁ』ってラノベの読み……」
「その話はしたくない」
ハッキリとした声で俺を威圧する。
ただの話のネタで言ったつもりが、どこで地雷を踏んだのだろう
凪子はブランコに座ったまま身を守るように身体を丸め、自分で自分を抱きしめる。
自分の殻に閉じこもって身を守る仕草だった。