公園内の自動販売機の前で小銭を出してると
「これがいい」
ほっそりとした白い指が
ひとつの紙パック飲料を指さす。
さくら色した爪が綺麗だなって思った。
「これ給食に出てるよね」
「うちの町の特産品だからね」
「特産品なんだ」
感心したように凪子は俺の言葉を繰り返す。
男って……リピート言葉に弱い
って
何を考えてる俺。
凪子にプルミル
自分には喝を入れるようなハードな炭酸飲料を買うと、彼女はベンチに座らずブランコへと進む。
「ブランコも久し振り」
嬉しそうに凪子は座り
俺もその隣に腰を降ろした。
「ありがとう」
紙パックのストローを剥がし、俺に礼を言う。
学校で見る事のない彼女の笑顔。
無表情で人の目を見ず避けている女の子とは別人で、凪子の表情は爽やかで優しい。
「別に……」
急にこの状況が恥ずかしくなり
一気に炭酸飲料を喉に流し込んだらむせてしまい、涙目で咳き込む。
「大丈夫?」
「ゼンゼン平気」
我ながら情けない。
誰もいない公園
凪子とふたりきり
嬉しいような
くすぐったいような
困ったような
恥ずかしいような
逃げ出したいような
時間がゆっくり過ぎてほしいような
すぐ過ぎてほしいような
そんな気分だった。