自転車ふたり乗り
しかもこの田舎で……。
俺達は商店街を通り抜け、あてもなく自転車を走らせる。
きっと噂は広がるだろう
家でも学校でも
誰かに知られたら
そっこー
突っ込みが入るだろう
けど
荷台の重さが愛しかった。
苦手なタイプだな
話しずらそうだな
関わりたくないな
そんな想いは
自転車の加速と共に坂を下り
「もっとスピード上げて」
楽しそうな凪子の声と一緒に
煙のように消えてゆく。
「貧血起こすなよ」
俺はペダルに力を入れ長い坂を下り
彼女の笑い声と
腰に回る小さな手を感じながら
甘い息苦しさを増す。
きっと
それは夏だから
この暑さで
ワケわからなくなっただけ。
自分に言い訳をしながら
背中に当たる凪子の柔らかい身体を感じ、心臓をバクバクさせている俺だった。