「やっぱり颯大から誘ってよ」
「何が?」
「須田君を卓球部に入れる話」
まだあきらめてないのか
「お前から誘えよ」
めんどくさそうに返事をすると
「いやー!無理っ!」
大きな声で恥ずかしそうに叫ぶ七瀬。
「お前こそタイプなの?」
普通に聞くと
「颯大はどう思う?」って逆に聞かれた。
どう?どう思うって……会話が通じてないのか、返事に困る。
「私が須田君を好きって言ったら、どう思う?」
七瀬は自転車を止めたので
俺も足を止め
七瀬を見る。
商店街のオレンジかかった灯りに照らされ、七瀬は真面目な顔で俺を見ていた。
「どうって?え?須田海斗か?うーん」
競争率が高そうだな
「七瀬が真剣に頑張れば、いいとこいくんじゃね?」
「……えっ?」
「たしかに倍率は高いと思うけど、お前もいい子だし、それなりに可愛いって言われてるし、頑張れば落せるかもしれない。俺も応援するか……」
「颯大のバカ!」
七瀬は鬼のような形相になり、商店街に響くような声で叫んで自転車にまたがる。
「おい」
その迫力に負けて動揺してると
「颯大の大バカ。最低男。人の気持ちを考えろ!」
怒りの追い打ちを俺にかけ
怒鳴るだけ怒鳴り
自転車を飛ばして
見る見るうちに背中が小さくなってゆく。
「何だよこれって……」
ワケわかんねー。
俺、何かしたか?
大きな溜め息を出し
俺も自転車に乗り
何か重い物を背中にのせた気分で
ゆっくりと家路に向かった。