「急に掃除って何だよ」

「新しい看護師さん来るからさ」

「東田さん辞めたんだっけ」

母さんより年上の看護師さんがいたけれど、そろそろ自分の人生を楽しみたいからとアッサリ辞めてしまったらしい。

「プルミルを山ほどかかえて、世界一周の旅に出た」
遠い目をして智和おじさんが言う。
女の人って
いくつになっても行動的だよな。

「あのさぁ」
俺は手を止め
イスを運んでおじさんの目の前に座る。

「真面目な話するなよ。東田さんの送別会で昨日は飲み過ぎて二日酔いだから」
後ろに下がられガードされたけど
それは無視しよう。

「もう五年経つんだ」

「……早いな」

そう
あれから五年。

「おじさんは須田凪子に今でもプルミルを送ってるんでしょう」

「プルミルは役場が送ってる。俺は知らない」

「でも、智和おじさんが凪子の保証人になってるんでしょ」

保証人。

あの時
智和おじさんが
凪子を殺さない代わりに、仲間に入れてくれた。

かなり危険な判断で
勝手な行動だったから
町から散々説教されたらしい。

智和おじさんじゃなくて
あの場所に
別の大人がいたならば

凪子はあのまま
山に運ばれ
殺されていただろう。