「そうだね。気の毒だけど仕方ないか」
智和おじさんは立ち上がり
大きく身体を伸ばし

「お兄さんはドロン山に入って行方不明って事になるけど、いいかな?」
凪子にさりげなく確認する。

「はい」
凪子は真面目な顔でおじさんを見上げて返事をした。

「それから、問題は君なんだ」

避けて通れない問題に
俺の心音が高くなる。

「かわいそうな生い立ちだったね。でも君は全てを知ってしまった。君の存在をどうにかしないといけない」

そっとおじさんは凪子に近寄り肩に手を触れたので、俺は慌てておじさんの手を振り払い凪子の細い肩を抱く。

「凪子を助けて」
心の底からの願を込めて声を振り絞る。

嫌だ
殺したくない。

「死にたかったんだよね」
優しい智明おじさんの
今までに聞いた事が無いような冷たい怖い声。

「はい。そうです」

凪子はおじさんの言葉を受け止め
背筋を伸ばし
凛として答えた。

「絶対ダメだ」

俺は凪子を強く抱きしめる
どこへも行かせない
死なせるものか

絶対守りきる。

「ありがとう颯大君。でも、私は……」

「俺が守る」

きつくきつく
壊れるほどきつく
その細い身体を抱いていると

「じゃぁ仲間にするか?」
困った顔で智和おじさんが俺に言い
ふたりの力が弱まる。