「妹は人が苦手なんだ」

凪子を保健室のベッドに運び
後は養護の先生に任せ
俺達は保健室を後にする。

貧血気味で今朝から調子が悪かったとか。

「転校初日から休むのも嫌だしね」

ゆっくりと並んで歩くと、廊下の端から上級生達の視線を感じた。

綺麗な転校生は
全校生徒注目の的。

「双子のテレパシーってやつ?」

俺が聞くと
須田海斗は「えっ?」って顔をした。

さっきは内村と並んでたせいなのか大きく感じたけど、横に並ぶと俺と同じ位の身長だった。

175くらいか。

「いや、倒れる寸前でクラスに現れたから」

七瀬の言葉を真似すると
王子様的登場で
隣のクラスの女子のハートはズキュンだろう。

「ただの推測」
海斗は柔らかく笑う。

「朝から調子悪くて、人が苦手で……きっと俺みたいに隣のクラスで質問攻めされてんだろーなーって思ったら、アイツ倒れるんじゃね?って思って様子を見に行ったらビンゴだった話」

照れた表情に親近感を得た。

「心配かけてごめん」

近くで見ると
吸いこまれそうな茶色い瞳をしている。
思わず見惚れる自分が怖い。

「いやこっちこそごめん。転校生なんてめったにないから、みんなテンション上がって群がって嫌な気持ちにさせたかもしれない」

「それはないけど。妹は身体が弱いからさ、迷惑かけたらごめん」

「そんなに弱いの?」

「うーん……そうだね……色んな意味で弱いなぁ」
涼しい顔で返事をし
須田海斗は寂しそうに笑ったから、それ以上は突っ込めずに終わってしまった。