聞き間違い?
俺のおもちゃって?俺とも寝てる……って?

倒されたまま凪子を見ると
絶望的な顔をして唇を噛んでいる。

「それって」

「だから理解しろよ。頭わりーなぁ。田舎にいると脳も平和で動いてないのか?」

須田海斗は遠慮なく俺の腹を蹴り上げ、凪子の悲鳴がそこらに響く。

「ほらほら、衝撃で何も言えない?西久保君」

後頭部に須田海斗の靴が圧力をかける。
踏まれる頭はズキズキし
蹴られた腹は苦しくてたまらない。

「僕達は出て行くよ」

須田海斗は座り込み
俺の髪を引っ張り顔を寄せる。

端整な顔が冷酷さを増す。

「西久保君。世の中で大切な物って何だと思う?僕は権力だと思う」

何を言ってんだこいつ。

「どんなに悪い事をしても、全て消し去ってゼロにしてくれるのは親の権力だと思うから」

「松本の話か?」

「そうだね」

須田海斗は俺の髪をつかんでいた手を高い場所で離し、俺の頭は地面に叩き下ろされる。

「まだまだ遊びたかったけど、いつも大人しい凪子が西久保君に影響されてチョロチョロしてる」
耳元でカチカチカチと音をさせ
奴はそれを俺の目の前に出す。

「僕も沢山持ってるんだ」
冷たいカッターナイフの刃が俺の喉に当たる。
呼吸をするたびに
その刃が刺さる気がしてたまらない。

「お兄ちゃんやめて!」

「……そうだね。男を傷付けても面白くない」

刃が戻され
俺の緊張が和らいだ時

スーッと須田海斗の腕が踊るように動き、俺の喉元に一筋の血を流れさせる。