「だって……いや、松本は嬉しそうに言ってたぞ『須田君に告られた』って」
助けを求めるように
松本の親友である森ちゃんを探してその顔を必死で見るけど
森ちゃんは大きな身体を小さくし
プルプルと顔を横に振る。
「それは聞いてない」
森ちゃんが言い
俺は目がテンになる。
しまった
素直で真面目な松本の性格を考えると
俺に話した『内緒だよ』は、本当に内緒話で自分の親友にも打ち明けてなかったのか。
話しておけよ松本。
「結衣は須田君の事が好きだったけど、須田君は妹さんが心配でベッタリだから、自分の入るスキマはないかなぁーって……は、言ってたけど」
森ちゃんが言うと
須田海斗は目を大きくして
「知らなかった」ってため息まじりにそう言った。
この嘘つき野郎。
「お前どーゆーつもり?」
カッと熱くなり
俺は自分のイスを倒し
意気込みも荒く須田海斗の元へ行こうとしたら、体育会系の奴らにガッツリ止められ押さえつけられてしまった。
グルリと周りを見渡すと
みんなの気の毒そうな目が俺を襲う。
そんな目で見るなよ
どうして
信じてくれないんだ。
みんな
須田海斗の味方かよ。
ガックリ力を落とし
昔ながらの仲間の腕の中で大人しくなる俺。
「午後から警察が来て、凪子の話を聞きに来る。これから色々はっきりするだろう」
須田海斗はゆっくり教室を見て柔らかく話す。
カリスマ教祖が信者に語りかけるように。