「西久保君は疲れてる。昨日の今日だから疲れてる」
呪文のように言う須田海斗。

「俺は疲れてない。ただ教室中を洗脳するお前が嫌いなだけ」
言い切ると
七瀬がこらえきれなくなったように席を立ち

「洗脳されてんのは颯大でしょう!」
俺の顔を見てハッキリ言った。

はぁ?
何で俺が洗脳されてるって?てか誰に?

「颯大は須田凪子に洗脳されてる」
七瀬がそう言うと
驚くことに教室中がうなずいた。

「颯大を洗脳して、ウサギを殺して結衣を傷付けた」

「だからそれは」

「私達はそう思ってる。思ってないのは颯大だけ」

そうなのか?
思わず周りを見渡すと

だれも否定しなかった。

教壇の上で
哀れむように俺を見る須田海斗。

おのれ……。

「お前は昨日、松本をちゃんと送ったか?」
俺が聞くと
須田海斗は片方の眉を少し上げる。

「彼氏ならちゃんと家まで送り届けたんだろうな」
俺の【彼氏】という言葉に回りは反応するけど、須田海斗は不思議そうな顔をする。

「彼氏って?」
キョトンと言われてムッとなる俺。

「お前が松本結衣に告ったんだろ。そして付き合ってんだろ」
松本が恥ずかしそうに『内緒ね』って言ってくれたのを思い出す。
嬉しそうな顔だった。

「いや……告ってはいない」
しれっと言われた。

はぁ?