「西久保君」
憐れみを持った
悲しそうな声で須田海斗は言う。
「凪子はそのカッターナイフ。10本は持ってるよ」
「……え?」
「たった1本しか持ってないと思った?」
え?だって……。
「凪子は沢山持ってる」
「でも俺に言った。『ウサギは殺してない』って言った」
必死になって訴えるけど
俺が大きな声を出せば出すほど
不利になる流れがあった。
「凪子は嘘つきだから」
「おい!その言い方だとお前の妹が犯人って話になるんだぞ」
「僕は信じているよ。凪子の無実を。だって大切な妹だから……でも、もし事実なら裁きを受けなければならない」
悲しそうに目を閉じる表情は妹想いの優しい兄だった。
もし事実なら……って
その言い方自体が認めてるんだろ。
てか
皆を誘導すんなよ!
「須田君は一生懸命だけど、私達は須田凪子を許せない」
「須田に甘えてんだろ」
「須田君が犠牲になる事ないよ」
そんな意見があちこちから出てきて、須田海斗は「ありがとう」って心を込めて感謝する。
流れが違うだろう。
「おい。俺より須田海斗を信じるのかよ」
我慢できずに叫ぶ俺。
「昔からずーっと一緒に育ってきた。仲間の俺より、ちょっと前にやって来たこいつを信じるのかよ」
何だよお前ら!
「お前ら洗脳されてんだよ。こいつの言う話は変だろうが」
ガンガン言うけど
誰も何も言ってくれなかった。