須田海斗は話が上手い。

松本の事故の事を嘆き悲しみ
その苦しそうな表情を見ていると
こいつは心優しくて
思いやり深いヤツって思うだろう。

周りはそんな目で見てる。

でも俺の目は冷めていた。

須田海斗が言うには
凪子は昨日の夕方から夜にかけて出かけていたけど、どこに行ったかは教えてくれなかった。
でも服には草が付いていたと

そこで教室中がざわつく。

松本結衣の顔を切ったのは
須田凪子。
9割がそう思ってるんだろう。

「昨日のカッターナイフは須田凪子のじゃない。こっちが本物。須田凪子のカッターナイフ」

俺は立ち上がり
家から持って来たカッターナイフを持って高く上げた。

これはウサギ殺しの凶器じゃない
凪子が自分を傷付けてる道具。
自分以外には使ってないはず。

みんな驚いてこっちを見ていたけど
須田海斗だけは俺と同じく
冷たく覚めた目で俺を見下ろす。

『だからどうした?』って言いたい顔だった。

「どうして颯大が持ってるの?」
女子に聞かれて俺は立ち上がって須田海斗をにらみつけた。

「直接、須田凪子本人からもらった。これで彼女は自分を傷付けてる。人は傷付けず、自分自身を傷付けている。そしてウサギは殺してない。本人が言った」
大きな声でそう言うと
教室中がまた大きくざわめく。

さぁどうだ!
これが証拠だ!
嘘ばっかり言ってんじゃねーよ。

俺達を洗脳してんじゃねーよ。

どうだ!って感じでいたけど

須田海斗は口元を軽く上げてニヤリと笑う。