それでも彼女は話し続けた。自分でもいまなにをしているのか分かっていないみたいで、ちょっと笑った。恥ずかしいのか、緊張なのか、ネジがぶっ飛んでんのか。とにかくひたすら話している。
「よし分かった。ちょっと待て、とりあえず落ち着こう」
「す、すみませ……」
なんだか変な子だな。こんなふうに告白されたのははじめてで、びびったけど、こんなのも面白くてなかなか嫌いじゃない。
「えーっと……じゃあ、まずはお友達からってことでいいっすか?」
「え……!? いいんですか!?」
「試合見てくれたのすげー嬉しい。また来てほしいっす」
「行きます! もう絶対行きます! いちばん前で応援します!!」
興奮しているのか、前のめりになっている彼女と連絡先を交換して、そのまま一緒に電車に乗った。どうやら住んでいる街が同じらしい。
電車に揺られている20分間、いかに俺のプレーに感動したか、いかに俺がかっこいいのかを、彼女はとても熱く語ってくれた。ぶっちゃけ死ぬほど恥ずかしかった。
それでもやっぱり、好きでやっているバスケを褒められるってのは、なによりも嬉しいことで。
「あのっ。また連絡してもいいですか?」
その申し出を断る理由なんか、ひとつも見つからなかったんだ。
「うん、ぜひ。すげー勢いで待ってます」
「わ、わ、すごい勢いで連絡しますっ」
照れ笑いがかわいい彼女との恋を予感させながら、晶のいない最初の春が始まった。