右脚が復活してからの毎日はとても忙しかった。部活、部活、アンド部活。おかげで後期の中間テストはぼろぼろで、終わってみれば再試が3つもあった。

テスト翌日から始まる、恒例の放課後日替わり再試。俺は、そのなかの数学ふたつと英語に、だいたい毎回いる。


「あー疲れた……死ぬ……」


どうして走ってばかりの部活より、ただ座っているだけの勉強のほうが疲れるんだろう。

帰るなりソファに倒れ込んだ俺に、母さんが「制服のまま寝ないでよ」と声をかける。


「どうだったの、再試は」

「……びみょー」

「ええ? だからお母さん言ったでしょ、無理して晶と同じ高校になんか行かなくていいって。入ってからがつらいんだから」


べつに晶がいるから西高に入ったわけじゃねえけどな。俺がこの高校を選んだのは、ほかでもない、日和さんがいたからだ。

でもそういやそうだったか。受験のときは晶を理由にしたんだっけな。姉ちゃんがいると楽だから西高に行きたいとか、テキトーなこと言って。


「晶と同じもん食って同じとこで寝てんのに、なーんで俺だけこんなに馬鹿なのかなー」

「それは頭の構造がお母さんに似たからでしょ」

「たしかになー。そうだよなー」

「ちょっと燿。ちょっとは否定しなさいよ」


ばりばりの銀行マンの親父と、名門大学にさらりと合格した姉。ふたりは本当によく似ている。母さんと俺が似ているのと同じくらいに。