そう考えて、私は穴に入りたいくらいに思いました。




ですが先生は驚いたり戸惑ったりする様子もなく、小さく「そうか」と答えました。






「じゃあ、明日は早く帰れるんだな」





「………はい」





「ゆっくり身体、休めろよ」





「………はい」






私がこくりと頷くと、先生はふっと頬を緩め、唇が優しい三日月の形になりました。






ーーーやっぱり、先生は、私のバイトが終わるのを、駅で待っていてくれたのでしょうか。





帰りが遅くなる私と、一緒に帰るために?






そんな、自分に都合のいいことを考えて、私は頬が熱くなるのを感じました。






私は顔を伏せたまま、






「ありがとうございました。

失礼します」






と言って、逃げるように電車を降りました。