じいさんは特に用事があったわけじゃないらしく、どうやら世間話をするために春川を呼んだらしかった。




春川は少し伏し目がちになり、じいさんの顔を見ているようで、視線を逸らしている。





俺は話が終わるのを待ってレジに行こうと考えて、しばらく様子を見守ることにした。





にこにこしながら何か喋りつづけるじいさんの言葉に、小さく頷いては相づちを打つ春川。





その表情はいつものように乏しいが。





ーーー俺には、なんとなく、分かってしまった。




春川は、じいさんのことを、どうやら迷惑に思っているらしい。





授業を聞くときはいつも背筋を伸ばし、まっすぐに視線をこちらに向け、目を逸らすことのない春川が、今は少し猫背気味になり、目を伏せて視線を合わせないようにしている。