食事を終え、食後のコーヒーも飲み干して腕時計に目を落とすと、9時50分。




そろそろ閉店の時間だ。



まだ店内にはじいさんが一人残っているが、片付けもあるだろうし、早めに出てやったほうがいいだろう。




俺はそう考えて、伝票を持って席を立とうとした。





ーーーそのとき。






「彩香ちゃーん、こっちこっち」





「………はい」






奥の席で煙草を吸っていたじいさんが、春川に向かって手招きをした。




春川は少し戸惑ったように目を瞬かせてから、しかし、すぐにじいさんの席へと歩いていった。






俺は精算を頼むタイミングを逃してしまい、とりあえず二人の様子を見ることにする。