しばらくして、また、カランコロンと鐘が鳴りました。






「いらっしゃいませ」







振り向いた私は、思わず動きを止めてしまいました。





戸口に立っていたのは、藤森先生だったのです。




はじめ、先生は、私のほうを見向きもせず、店内に目を走らせたのですが、空席に向かって歩きながら私に気づいて、「あ」と声を上げました。






私は「こんばんは」と言いましたが、驚きと緊張のせいか、いつにも増して声が消え入りそうに掠れてしまいました。






「………春川?」






先生が目を丸くして、私の顔をじっと見ています。





もしかして、他人の空似と思っているのかもしれません。