それきり、春川は黙り込む。




ただ、俺の真意を探ろうとしているように、黒目がちな瞳が俺を映しているだけ。






――――本当に、何を考えているんだか、全く予想もつかない。





俺は動揺を悟られないよう、こほんと咳払いをして質問を続ける。







「………えーと、どんな本、読むんだ?

あ、あー、良かったら、教えてくれないかな」







なんか、ただの世間話のつもりだったのに、ご大層なことを訊ねるようになってしまった。




どうも、こいつと喋るのは苦手というか、調子が狂うな………。







「今、読んでるのは、川上弘美さんの本です」






「へぇ、知らないな……」






「………そう、ですか」